2014年6月22日日曜日

第2回 あっさりと接続できる

ご近所のゴールデンのお友だちに装着してもらう

ペットフィットを手にする前に頭に浮かんだのは、これって私にも簡単に設定できるのだろうか、すぐ使えるのだろうか、面倒だったらヤだなといった情けない懸念だった。

若いころは、こうした機器の設定はむしろワクワクしながらやったものだが、私も年をとって、できれば面倒なことは何ひとつやりたくないという心境にいたった。
面倒なのは自分の人生だけでもう十分なのだ。

そんな思いもあって、じつは登録設定を2日ほどぐずぐず先延ばししていたのだが、やってみたら恥ずかしいほど簡単だった。

基本的には、認証のためにドコモのIDとパスワードさえ取得してあればよい。
スマートフォンはもちろん、パソコンやタブレットPCからでもインターネット接続さえできれば登録設定できる。

まず、ペットフィットのサイトからドコモIDとパスワードでログインする(ドコモのスマートフォンを使っている人はWi-Fi経由でなければ自動認証されるから、この手続きすら必要ない)。
あとは連絡メール送信先(携帯メールアドレスであることが必要)、そして、製品に添付されたカードに記載された「ペットフィットタグID」と「ペットフィット認証キー」を用意すればいい。


同梱されたカードにタグのIDと認証キーが記されている
(IDとキー、QRコードにはマスクをかけてあります)

画面の指示どおり必要事項を入力していけば、なんの問題もなくオーナー登録は完了する。
スマートフォンをふつうに利用している人にとっては鼻歌まじりの作業に違いない。

そして、ここからがペットフィットならではのユニークさなのだが、タグを装着する犬についての入力項目があれこれある。
犬種、年齢、体重、健康状態……。
ユニークなのは「脚の長さ」(普通、長い、短い)や食べさせているフードの銘柄とその給餌量についての質問。
なぜこんな質問があるのかというと、歩数(4本足の歩数は人間の倍になるのだろうか)と歩行距離、摂取カロリーと消費カロリーが算出されるからである。

まあ、犬にかんする質問に答えるのがただただ楽しい作業なのは、ご承知のとおり。

設定をすべて終えると、以下のようなペットフィット使用者向け画面にアクセスできる。

iPhoneだとこういうトップ画面が開く

iPadだと左側にメニューが一緒に表示される。iPhoneではこの部分は別画面となる。


ペットフィットでは、2画面(iPhoneだと3画面)にわたって犬とタグの現在の状態が表示されるのだが、どんな内容が示されるのかを、ざっと説明すると――

・現在の様子(寝てる、起きてる、歩いてる、走ってる)と周囲の計測温度。
・歩数と歩行距離。
・摂取カロリーと消費カロリーのグラフ。それについてのアドバイス。
・1日(24時間)の歩数と歩行距離をグラフにしたもの。
・1日の犬の状態を比率にしたもの(たとえば寝てる時間が90%、歩いているのが5%とか)。
・1日の睡眠をグラフにしたもの。
・1日の温度の推移をグラフにしたもの。


愛犬の状態がこのように表示される

ここまできて、ある疑問が浮かぶ。
で、地図はどこなの?
犬の居場所が表示されるはずの地図だ。
画面に「MAP」と記されたボタンはあるのだが、押しても動作しない。
なぜだ、どこか間違えているのか。
じつは、ふだんはどこにも地図は表示されないのである。

MAPと書かれたボタンはあるのだが、押しても反応しない

2014年5月29日木曜日

第1回 逸走犬保護の切り札となるか

NTTドコモの「ペットフィット」は、私たちが待ちわびていた製品だった。
GPSによる愛犬(保護犬)の位置検出ができて、それをスマートフォンやパソコンのマップ上に表示できるというのである。

保護犬の逸走ほど辛いものはない。
いまでも私は、早朝や深夜に電話が鳴ると反射的に「Perroの犬が逃げたのか……」と身をかたくしてしまうことがある。
逸走の連絡を受けたときの電話口で背中に冷たいものが走るあの感触は、忘れようにも忘れられるものではない。
会のメンバーが手分けして何日も捜して歩いて、なお手がかりが得られないときの焦燥感。それが疲労や徒労感、心配とないまぜになってどっと押しよせてくる。

今年3月からサービスが開始されたペットフィットを試験的に導入したのは、この製品が逸走した犬を保護する切り札になる可能性があると考えたからだ。

なにはともあれ、まず手元にとどいた製品について見てみよう。
この製品の基本知識についてはNTTドコモの開設しているサイトをご覧いただくのが手っとり早いだろう。


犬に装着するのは上の写真の「ペットフィットタグ」(以下タグ)と呼ばれる真っ白いプラスチック製の本体である。
私の身近にあるどんな電気製品より小さい。
説明書によればH32×W50×D17.3(mm)。
ボールペンと比べてみると――


このタグと、田舎おむすびのてっぺんを少しつぶしたような「ペットフィットステーション」(下の写真)がセットで機能するようになっている。
ステーションはいわばドックのような役割を果たし、充電器にもなっている。

▲写真ではわかりにくいが緑のライトが点灯「異常なし」を示している。上の凹みにタグを載せて充電する

タグを犬に装着するためには、付属の専用ケースに入れる必要がある。
合成皮革のような肌合いの素材で表面には大きな透明のビニール窓が設けられている。
ケース裏側の上部から幅3cm強、長さ5.5cm程度のバンドが伸びていて、それを犬の首輪に通して下部のベルクロに固定するようになっている。
で、このようになる。



十分に小さいように思えるタグだが、実際に犬に装着してみると案外と大きく感じる。
預かり犬の柴のカンペイに装着するとこんな感じだ。



チワワなどに装着すると不釣り合いなサイズに感じる人もあるかもしれない。逆に大型犬だと周囲から気づかれないほど小っぽけに見える。
試しにフラットコーテッド・レトリーバーに装着したところ被毛に埋もれて外からはまったく見えなくなってしまった。

重さは、説明書によればタグだけで29グラム。
見当をつけていただくために、首輪の重さを量ってみた。
下の写真のように、中型犬(体重15〜20kg程度用)の首輪が実測で43グラム、ミニチュア・ダックス程度の小型犬用が実測で9グラム、ケースに入れたタグが実測で37グラムだった。
少なくとも犬の負担になるような重さではないだろう。

▲ 左上から時計回りに中型犬用首輪、小型犬用首輪、タグ、ケースに入ったタグ

外形的なことはひとまずこれくらいにして、ではこのタグは本当に私たちが望むように機能するのだろうか。
「フィット」という名称がついていることからもわかるように、この製品はそもそも犬の健康管理、日常管理のような機能を主眼としているのだと思われる(そうした機能については後に説明するつもりだ)。

けれども、私たちが望むのはあくまで非常時の位置検出機能であり、それだけだといっていいくらいである。
その点で本当に役に立つのか?
結論からいうと立派に機能した。有用である。

下は、自宅のiPadのディスプレイ上に表示された犬の「現在位置」。
私と犬はその時間、まさにどんぴしゃりで犬マークで表示されたその場所にいた。
数キロも離れた自宅から、犬の所在する位置をピンポイントに特定することができたのだ。

▲ 犬のアイコンが現在位置。ここではiPadに表示された画面の一部を切り抜いてある

ペットフィットタグが装着してあれば、内蔵バッテリーが生きているかぎり、スマートフォンなどを用いて、逸走し迷子となった犬の居場所を確実につきとめられる。
これは私たちにとって朗報である。

散歩中に出会ったハスキー(一般に脱走癖、放浪癖のある犬種)の飼い主さんがカンペイが首からぶら下げているタグにGPS機能が備わっていると知って、「ああ、昔からこれがあったら……」と嘆息した。
一般にハスキーは脱走に驚くほどの熱意と予想外の知能を発揮する。若いころ、このハスキーは何度も家から逃げだし、あちこちで保護された武勇伝の持ち主だという。
家族はそのたびに心をすり減らしたのだった。

ただしペットフィットには思いがけない制約や限界もあった。
そのあたりについては次回以降に詳しく見ていきたい。(C)